Doctor Column院長コラム

Vol.06 新しい試み ?皮膚のリハビリテーション?

2013年04月10日

神戸山手クリニックは2006年より敏感肌やアトピー肌に対して皮膚バリアの補強を目的にしたオリジナルのメディカルエステしっとり肌コースを提供してきました。最近ではこれを発展させて対象疾患を広げ、より治療としての内容に重きをおいた皮膚のリハビリテーションとしてしっとり肌トリートメントを行うようになりました。
皮膚のリハビリテーションというと、初めて耳にする用語だと思いますがこれを新しい試みとしてご紹介したいと思います。

対象とする疾患は皮膚の湿疹、化粧品皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患(ただし、ウィルス、真菌由来のものは除外します)と敏感肌、乾燥肌、乾燥ニキビなどです。
なかでも何ケ月も何年も軽快することなく難渋している症例を考えています。また、対象とする部位もクリニックでのトリートメントになるため顔と頚部に限定したいと思います。

皮膚のリハビリテーションの位置づけ

Rehabilitationとはラテン語のRe(再び)+habilis(適した)が語源とされ、損傷された状態をもとの正常な状態に戻すことと理解してよいと思われます。言いかえると治療ということになりますが、整形外科のリハビリや湿布などと同様に皮膚科治療の補助療法や併用療法としての位置づけができるのではないかと考えています。

類似語にメディカルエステやメディカルスキンケアがありますが、医師による エステや肌のお手入れというイメージが強いため、より積極的にクリニックで治療するトリートメントとしてあえて皮膚のリハビリテーション という用語を用いました。

炎症性皮膚疾患の病態

理解を容易にするために炎症性皮膚疾患の病態についてすこし述べておきます。

病原微生物や物理化学的因子、外傷などにより組織に炎症がおこるとそこは発赤、腫脹し熱をおびて痛みを伴います。これは紀元前1世紀頃よりCelsusによって炎症の4徴として記述されています(その後、機能障害が追加されました)。

組織に炎症がおこると種々のケミカルメディエーターが放出され、次々にカスケード反応を起こして細胞による炎症反応が進んでいきます 以下に炎症の徴候のそれぞれの機序について簡単にみてみます。

発赤・腫脹 組織の微小血管系は細動脈ー毛細血管ー再静脈でできていますが、炎症がおこると最初に細動脈が一過性に収縮し、その後ブラジキニンなどにより細動脈が拡張して血流量が増加すると毛細血管、再静脈まで拡張し充血がおこります。炎症部位の血流量は正常時の10倍にも増加することがわかっています。そして細静脈を中心に血管透過性が亢進すると血漿成分が滲みだし浮腫をおこすようになります。

疼痛は炎症性浮腫による組織の伸展で神経終末が刺激されておこる以外にプロスタグランジン、ブラジキニン、セロトニンなどのメディエータが関与して発現します。

発熱は細動脈拡張による血流増加、うっ血により局所熱感がおこり、また、インターロイキンIL?1、リンホトキシンによって全身の発熱をおこします。
一般的な炎症時に発現する上記徴候の他に皮膚の場合は乾燥とアレルギー反応による痒みを伴うことがしばしば見られます。

乾燥については精緻な皮膚バリアが炎症によって破壊されて水分が蒸発し、乾燥がおこります。(スキンケア?参照)

痒みについては種々のメディエーターが関与し、なかでもヒスタミンがC繊維神経終末のH1受容体と結合して痒みを生じることがわかっています。アトピー肌や敏感肌ではこのC繊維神経終末やヒスタミンを合成、蓄積するマスト細胞が表皮にまで侵入していてこれが皮膚過敏性を助長すると考えられています。また、ドライスキンやストレスなどの心理的要因などでも痒みは増強されます。一般に皮膚温の上昇は痒みを増強し低下は痒みを抑制します。(逆に45℃近くまで上昇させると痒みが抑制される報告もあります)

炎症性皮膚疾患に対する治療の現状

これらの炎症性皮膚疾患などについては皮膚科の立場から大変優れた治療法が確立されています。特にステロイドはその強力な抗炎症作用や各種サイトカインの抑制作用で炎症性皮膚疾患の鎮静にとても優れています。このステロイドと非ステロイドの外用剤と内服薬や抗ヒスタミン・アレルギー薬の内服、それに尿素、乳酸、ヘパリン類似物質などの保湿剤が医薬品として認可され使用されています。

原因物質を除去して、これら外用剤を塗布し、内服薬を服用して保湿剤を使用するとそれで完治する症例が多いと思います。

一方でこれら最新の治療に対して、ご本人の自己管理のまずさ等もあり、なかなか治らず、大変困っておられる方があるのも事実です。

皮膚のリハビリテーションの重要性

上記の治療で軽快しない場合は通常ステロイド軟膏の強度をあげ、内服薬や保湿剤を増量して対応していきます。しかし、それでも治らず難渋する場合もあり、次第に症状はひどくなって患者さんにはイライラ感が募りクリニックを転々と変えていくことになります。

このような方に当院では皮膚のリハビリテーションとしてしっとり肌トリートメントをお勧めしています。

単に塗るだけと服用するだけの皮膚科治療では治まらない、赤く乾燥して痒みのある荒れて疲れた肌にたっぷりと水分を与え、必要があれば皮膚科軟膏も使用して、時間をかけて丁寧にトリートメントを行うのです。

トリートメントの終わった肌はオーバーヒートしたエンジンが冷却されたようにしっとりとして癒された肌におちつき、患者さんの表情もとても穏やかになります。

皮膚のリハビリテーションの重要性は一般に行われている皮膚科治療に、荒れた肌を癒すトリートメントを併用することで従来の 皮膚科治療のみでは得られない優れた皮膚の鎮静効果と高い患者さんの満足度にあるように思われます。

初診時画像、この後皮膚のリハビリ1回施術

1週間後、2回目皮膚のリハビリ直前画像

1週間後、2回目皮膚のリハビリ直後画像

2週間後、3回目皮膚のリハビリ直前画像

2週間後、3回目皮膚のリハビリ直後画像

4週間後、5回目皮膚のリハビリ直前画像

4週間後、5回目皮膚のリハビリ直後画像

神戸山手クリニックの皮膚のリハビリテーション

皮膚のバリア補強から出発したしっとり肌コースですが、対象を炎症性皮膚疾患にまで拡大して、バリア補強だけではなく赤く荒れた肌を癒して、皮膚科の治療効果も高めるべく皮膚のリハビリテーションとしてしっとり肌トリートメントを育てました。

多忙な皮膚科外来ではなかなか困難なため、併設のメディカルエステでゆったりと施術できる空間を用意いたしました。皮膚バリアの構成成分であるセラミドを含んだ温泉水をたっぷりと肌に与え、すべてご自身の肌に合った成分を使用して時間をかけて施術していきます。荒れて疲れた肌はかって経験したことのない安らぎを覚え、癒されていくのを実感すると思います。

皮膚科外来患者の3割を占めるともいわれる湿疹・皮膚炎群ですがその中には治療に難渋して困っておられる方も多数いると思われます。慢性化している方はもちろんのこと、早期の方にもこのしっとり肌トリートメントを治療としてお試しいただきたいと思います。

患者様の声 S様

私は8年間、顔の皮膚炎が治らず何軒もの皮膚科へ通い、それぞれの病院で処方されたステロイドを塗り続けていました。その結果良くなるどころか、薬をつけていても顔がかゆく、熱を持ち、乾燥はひどく皮がポロポロめくれてしまい、色素沈着もありどうしようもなく悩んでいた時に娘がにきび治療で山手クリニックに通っていて紹介してもらいました。

私自身何軒もの皮膚科で治らなかったので、また同じだろうと思いながら、でもどうにか治したいという気持ちで通い始めました。山手クリニックは、今までの皮膚科とは違う治療法で、そして、先生から「きれいに治りますよ」と言われた一言で長くかかるかもしれないけど通ってみようと思いました。

治療は、たっぷりの温泉水美容液を塗布しながら、皮膚のリハビリを受け始めました。最初はびっくりするぐらいの内容で慣れるまでは大変でしたが、スタッフの方から丁寧に教えていただいた通り家でも朝晩、そして外出中も指示通りのケアをおこないました。通い始めてもうすぐ1年になりますが、殆んど赤みも腫れもとれ、乾燥も無くなりメイクもしっかりつくようになりとてもうれしく思っています。花粉症があるので日によって時々赤くなったりもしますが、前に比べてとても良くなりました。あれほど毎日塗っていたステロイドも時々一時的に塗るだけでほとんど使っていません。

今は月2回皮膚のリハビリを受けに行っています。本当に肌の調子がよく、きめ細やかになり、白くなったような気がします。娘に紹介してもらい山手クリニックに来てよかったと思います。これからも美肌を目指して通いたいと思います。

初めての方のしっとり肌トリートメント

初めてしっとり肌トリートメントを受けていただいた方には必ずトリートメントの感想をおききしています。単に気持ちよかったとかいい感じがするという方にはその後の治療をお勧めしていません。とても気持ちよくて癒された感じがあり、明らかな効果が確認できた方にのみ、トリートメントに使用した製品をお分けして治療を継続していきます。しっとり肌トリートメントは、数ある当院のトリートメントの中で一番大切にしているトリートメントでありこれからも大事に育てていきたいと考えています。