院長コラム

2008.08.08

Vol.04 ビタミンの話(植物と人の関係)

ビタミンの話

神戸山手クリニックは皮膚老化の8割は加齢によるものではなく紫外線やタバコなどによる光老化が原因であると認識し治療しています。この光老化を医療機器のほかにビタミンAをはじめとする種々のビタミンやミネラルなども使用して治療していきますがその効果はとても優れていて従来のスキンケアでは得られないとても質の高い健康で若返った肌が得られています。

この優れたビタミンやミネラルはなぜ人の皮膚老化に有用なのか、それらを提供してくれる植物など生物の進化のあとを辿りながら調べてみました。 

    以下は仮説のはなしです。

原始地球の話

46億年前に地球は誕生したとされていますが原始地球には幾つもの隕石が衝突をくり返し生命の材料となる無機物質が集められたと考えられます。

45億年前に火星規模の惑星が地球に衝突して(giant impact)月が誕生し、地球上は熱いマグマで被われ大気は多量の水蒸気と二酸化炭素で充満されます。地球が冷え始めると豪雨が降り続き原始の海ができたとされますが、そこは全く酸素が無く、青酸や硫黄化合物などに満ちた危険な熱い海でした。

生命誕生

35億年前のチャートの
中のバクテリアの化石

38億年前にその海の中で硫化水素を利用しDNAを有する最初の生命が誕生します。不思議なことですが現在でも無酸素の深海底から噴き出す350度の熱水の中や強酸性の沸騰する泥の温泉の中、あるいは油田の中にバクテリアが発見されていてこれらも古いタイプのバクテリアとされています。しかもそのバイオマス(生物体量)は日のあたる地上にいるバクテリアに近いとされています。(※生命はそれをつくりだす無機物質と地熱などのエネルギーがあれば酸素や太陽エネルギーがなくても意外と簡単に発生するようです、はじめは暗黒の世界でした) これらバクテリアは鉱物を摂取しながら細胞膜の内外に電位差(プロトンパワー)をつくりだしてエネルギーを得ていたようです。  

地球の酸素化とモンスターの登場

35億年前にクロロフィルを有し光合成をおこない酸素を吐き出すシアノバクテリアが出現します。
27億年前にはシアノバクテリアの大繁殖がおこり海だけでなく大気中にも酸素が増えていきました。酸素のある海の中では酸素をエネルギー源とする活発な肉食バクテリア(αープロテオバクテリアというリケッチアに近いとされています)があらわれ、一方、硫化水素を利用する嫌気性バクテリアは有毒な酸素から身を守るために仲間が融合して体を大きくし、またヒストンと呼ばれるたんぱく質の膜でDNAを囲み核をつくります。(皆さんの腸管にも生息することがあるメタン生成菌という古細菌がその子孫とされています)

20億年前にこの核を有する嫌気性バクテリアが肉食の好気性バクテリアを体の中に取り込み真核細胞というモンスターが誕生しました。これが私たち多細胞生物の始まりだとされていますが、合体することで好気性バクテリアの遺伝子を取り込み酸素の下でも生存できるようになりました。実はこのことは生命進化の中で最もおこりにくかった出来事として認識されています。(相反する者を取り込み共生することで飛躍するというとても困難な出来事が人の進化のはじまりでおこったのですね) 真核細胞の中の好気性バクテリアはミトコンドリアとして残存し、さらに16億年前にシアノバクテリアも取り込んで葉緑体を有するようになったものは植物に進化していきます。

酸素の下で生存することに成功した真核細胞は新たな発展を遂げることになります。

エネルギー革命と生物の大型化・多様化

Newton 2008年4月号参照し改図

私たちは生きている間、常に呼吸をしますがそれをやめると数分で死んでしまいます。息を吸うたびに体の中の60兆個のすべての細胞に酸素をおくりこみブドウ糖を燃やしてATPとしてエネルギーを生産し生命を維持します。

右の図はミトコンドリア内膜でのATPを生産する呼吸鎖を簡略化したものですが右側のカボチャのようなものがATP合成酵素とよばれ、中には世界最小の分子モーターが内蔵されています。

バクテリアのエネルギー源は細胞膜内外の電位差(プロトンパワー)ですが、ミトコンドリア内膜もこの電位差を利用してモーターを回転させます。プロトン(H+)がATP合成酵素の中の回転軸を外から内へ流れると分子モーターが1秒間に17回転してATPが50個つくられます。ブドウ糖1分子からは理論上38個のATPが合成されます。(このATP生産時にフリーラジカルも発生するためこれが老化の原因だとする有力な説があります)

この真核細胞の酸素を 利用したエネルギー生産は、バクテリアの細胞膜内外の電位差を利用したエネルギー生産に比べてじつに20倍も優れているとされています。

ところで、この呼吸鎖にはNADH、FADやユビキノンなどのビタミンが作用しますがNADHはナイアシン、FADはビタミンB2のことでユビキノンは皆さんよくご存じのコエンザイムQ10のことです。(ビタミンは細胞のエネルギー生産という重要なところでも作用しています)

ATP合成酵素

右の図はラッカーらによって撮影されたATP合成酵素の分子モーターの電子顕微鏡写真です。これを見ると改めて大自然の智恵に驚かされてしまいます。 

エネルギー革命に成功したモンスターは大型・多様化していきます。たとえばバクテリアは現在でもほとんどが球状か棒状で単純ですが真核細胞は形も多様で大きさもバクテリアの1万倍から10万倍もあります。

オゾン層の完成と生物の陸上への進出 

4億年前には地上は現在とほぼ同じ酸素濃度になり、またオゾン層が完成しますが、まず植物が海から陸上に進出します。(植物も真核細胞由来ですから核を有していて紫外線に弱くオゾン層形成後に進出ということです)
3億6000万年前には乾燥して花粉などの微粒子が飛び舞う陸上に動物が進出していきます。
そのためには肺呼吸や手足の獲得と同時に皮膚の進化が必要でした。皮膚はバリアを獲得して水分蒸発を防ぎ、また花粉や細菌やウィルスの侵入をブロックし、さらにはメラニンを沈着させて紫外線を吸収して核を防御するようになりました。(スキンケアⅠ参照) 

植物と動物

38億年前、地球の無機物質から生命は誕生しましたが35億年前にはシアノバクテリアが現れ光合成を行いながら酸素を供給し始めます。20億年前に酸素呼吸をする真核細胞というモンスターが登場しエネルギーの大量生産に成功しました。その後、真核細胞は大型・複雑化の道を歩みはじめ16億年前にシアノバクテリアを取り込んだ真核細胞が植物となり酸素を供給しつづけます。そして4億年前に現在のオゾン層が完成しましたが生命誕生から実に34億年かかりました。

オゾン層の庇護のもとまず植物が陸上に進出します。光合成に成功した植物は食料の自給が可能になったために動き回る必要がなくなり地球に根をおろしてその成分を吸収し、太陽エネルギーの恩恵をうけながら大気中のCO2から糖(デンプンとセルロース)を合成して体をつくりながら酸素を供給しつづけます。

それだけでなく一日中、強い直射日光を浴びることで紫外線によるひどい光老化が進んでいると思われるにもかかわらず萎えることなく生き生きとし、また長寿が多くみられますが、これはビタミン、ミネラル、その他の抗酸化物質を多量に生産・蓄積し光老化の原因となる活性酸素やフリーラジカルを迅速に処理しているためと思われます。同じ真核細胞由来である動物の場合は、かりに植物と同じ条件下で直射日光に素肌を晒し続けると例外なしに短期間で死滅してしまうのではないでしょうか。

(実際にビタミン、ミネラルの他にβカロテンやリコピンなどのカロテノイドやフラボノイド、タンニンなどのポリフェノール類など多くの抗酸化物質が植物から見出されています。特に紫外線の強い南の地方に生息する植物は豊富な抗酸化物質を含んでいる可能性があり食材や薬草としてとても魅力を感じます)

チンパンジー

一方、動物は植物を摂取することにより間接的に地球の成分を取り入れ、また糖(デンプンとセルロース)を摂取して体をつくり、そして植物の提供する酸素を吸ってエネルギーを生産し生命活動を維持します。植物を食べない肉食動物も草食動物を摂取するので結局はおなじです。さらに呼吸鎖などの生化学反応を触媒する酵素のはたらきを助けるビタミン、ミネラルなどの微量栄養素も大部分植物から摂取します。

このようにみると動物は生存に必要なもの(オゾン層、食料、酸素、酵素反応を助けるビタミンとミネラルなど)のほぼすべてを植物に依存していることがわかります。さらに生存しながら進行していく老化(細胞が酸化していくこと)に対しても強力な抗酸化作用を有するビタミンやその他の抗酸化物質を植物から摂取することによってその進行を遅らせ、また、より積極的に錆(酸化物質)を除去し若返ることができる可能性があるように思われるのです。(スキンケアⅡ参照

神戸山手クリニックのビタミン・植物への思い

さて植物と人、同じ真核細胞から派生した子供同士ですが葉緑体を有したがために一方的に人に与え、そして育て守る立場になった物言わぬ植物に深い愛情と感謝の気持ちをいだきつつ野菜や果物などの恵みをいっぱい摂取して健康で若返った体を作っていきたいと思います。同時に、口と筋肉と神経を発達させて奪い享受する宿命を背おった現代のモンスターによって樹木生い茂る豊かな森が失われることがないように見守っていきたいと思います。

神戸山手クリニックは体表部にあるゆえに容易に光老化が進むお肌のために強力な抗酸化作用を有するビタミン・ミネラルなどを使用したビタミントリートメント、ビタミンによるスキンケアやビタミン点滴などを充実させて皆様の健康とアンチエイジングのお手伝いをしていきたいと考えています。

サプリメントなどの摂取について

健康やアンチエイジングのためにビタミンなどのサプリメントを愛用しているお客様が増えています。アメリカ栄養評議会がビタミン、ミネラルの安全な摂取上限値を設定していますが、当クリニックではビタミンの補酵素としての機能以外の抗酸化作用を重視してその他の抗酸化物質共々たくさん摂取することが良いと考えています。効果やコストの点からできれば、新鮮な野菜や食材からとることをお勧めしています。

尚、βカロチンは喫煙者の肺がんの発生を促進することが報告されているため喫煙者は摂取すべきではないと考えます。また、当院では皮膚のアンチエイジングにトレチノインを使用したスキンケアで優れた効果が得られていますが妊娠の可能性のある方同樣、喫煙者に対しても念のため使用を控えるようお願いしています。